プロジェクトのきっかけと開発の方向性を寺村さんにうかがいました!
今回考案したアイデアの紹介をお願いします!
SNSと連携して、リアルタイムの興奮を共有できる仕組みをつくります。
寺村さん 視覚障がいがある方も、リアルのレース観戦体験に加えて、SNS上での盛り上がりも同時に体験していただけるソリューション「Groove Partner(仮称)」を開発しています。
スマホアプリとクラウドを結びつけたシステムで、音声等の入力インターフェイスを持ち、SNS上での雰囲気を含めたテキスト情報を処理し、視覚障がいのある方が受け入れやすいフィードバックを行うところが特徴です。
SNSとの連携は、X(旧Twitter)のスーパー耐久レース関連のつぶやき、オフィシャルで提供されるS耐TVなどを想定しています。S耐TVのウェブサイトで提供されているドライバー情報、チーム情報に加え、リアルタイムの順位変動、ドライバーチェンジ状況などが提供されます。チャットからも情報を提供していく形になる予定です。
時系列コンテンツをリアルタイムで自然言語解析し、レース状況に関する情報、観戦者の分析、感情の動きなどについて分類し、タグ付けしながら量と時系列的な変化を動的に記録し続ける仕組みです。
発案のきっかけは何ですか?
リアルとデジタルを相互に行き来できる環境をつくりたいと思いました。
寺村さん 活動目標として中期ゴール、長期ゴールを設定しています。中期ゴールは、視覚障がいのある方が健常者と同じようにリアルとデジタルを相互に行き来し、エンターテインメントを楽しめる、物理的な情報バイアスのない社会を実現することです。
今回の取り組みは中期ゴールを念頭に置いたもので、実用化が可能なソリューションとして開発に着手しました。その先に、論理的な情報バイアスのない社会を実現するという、長期ゴールの達成も意識しています。
実証に向けて苦労していることは何ですか?
事前情報の提供を含め、没入感をどう高めていくかが課題です。
寺村さん 私自身もチームメンバーも、視覚に障がいがあるわけではないため、当事者の感覚を意識するのは難しいことだと思います。PoCの準備段階では、3名の全盲の方にインタビューをさせていだきました。
視覚情報が欠けていることを補うため、事実をそのまま伝えることが重要だと感じましたが、その先の感情の発露に至るには、分析的な情報や、他の人の感情にふれることで生まれる共感が重要だと感じました。事実情報、感情情報、分析情報の3つを適切に伝えなければいけないと思います。
後は没入感を高める工夫です。当日のレースの盛り上がりは、いろんな人たちが時間をかけてつくりあげた結晶です。体験していただく方にその場で伝えるには限界があるため、事前情報として知っておきたいことに関して、何を伝えるか、どう伝えるかについても考えなければいけないと思います。
本コンテストに参加した理由を教えてください!
サーキットという非日常空間での運用に魅力を感じました。
寺村さん 私は営業もやっているため、最近は大手企業とベンチャーやスタートアップが組んで課題解決に向き合うという、オープンイノベーションの事例を多く見ています。募集のプロジェクトもたくさんあり、独特の世界観を持つものもあります。
このコンテストは、他にはない魅力を感じました。障がいのある方にフォーカスを当てているのはもちろん、サーキットという非日常の環境で何ができるのか、考えたらワクワクしてきたのです。新しいモビリティ社会の実現を掲げるトヨタグループが推進していることもあり、ぜひ参加したいと思いました。
本コンテストでの挑戦、実証内容はどういったものになりますか?
おもしろさ、感動の理由を言葉にできるような体験を提供したいと思います。
寺村さん 限られた時間内なので限定的になってしまうかもしれませんが、参加していただいたみなさんに「心を持っていかれた」とか、「レースが好きになりました」と言っていただければうれしいです。
マシンのかっこよさ、音の迫力、レース展開のおもしろさ、ドライバー同士の駆け引きなど、感情移入できるポイントを、どれだけ伝えられるかがポイントだと思います。
単に「おもしろかった」で終わるのではなく、その理由をしっかり語ることができるように、新しくかつ深い体験をしていただく準備を進めていくつもりです。
最後に本コンテストにかける想いをお願いします!
夢中になってのめり込む感覚を、すべての人が実感できる社会の実現に貢献します。
寺村さん 夢中になれる大切さは機会平等であってほしいと思います。たぶん、夢中になる状態が生きていて一番幸せを感じられるし、生産性が高いのではないでしょうか。やらされていると感じるより、夢中になり、時間が経つのも忘れて取り組んでいるうちに終わったほうが、良い結果が残せると考えます。それが没入感で、レースに参加しているドライバーは、意識をしていなくてもみなさんが感じているはずです。
障がいの有る無しに関わらず、そんな没入感が得られる世の中にしていきたいし、今回の取り組みがきっかけの1つになってほしいと思っています。