誰もがレーサーになれる社会を目指す希央さん、実里さんにインタビューしました!
今回考案したアイデアの紹介をお願いします!
モビリティへの理解、レースへの興味喚起を目指します。
希央さん 私たちが目指しているのは「誰もがレーサーになれる社会~誰もがレーサー・チームスタッフ・ファンとして輝ける社会~」です。
障がいのある方にeモータースポーツを体験してもらうことで、モビリティに対する理解・興味・関心の向上を図ると同時に、モータースポーツのファンになっていだたくことが、今回の目標になります。
具体的には、スーパー耐久レースに「オンラインクラス」を設け、リアルなマシンが走っている様子が見えるところで、リアルとバーチャルが交差するようなイメージで、バーチャルのスーパー耐久レースを開催する予定です。バーチャルレースを体験するのは、網膜色素変性症の方、ロービジョンの方など視覚障がいのある方と、発達障がいの方など、さまざまな障がいがある方になります。
ロービジョンの方なら視界が欠けていたり、発達障がいの方だと識字に問題があったり、一人ひとり個性が違うので、障がいを乗り越えながらどんな走りを見せてくれるのか、私たちも楽しみにしています。
活動の主体になるのは、障がいのある方たちにより、モータースポーツのバリアフリープロジェクトチームとして創設された「Racing Fortia」です。レースに出場する3名を含め、6・7名で活動し、今回のイベントを盛り上げ、成功させるためにミーティングを重ねてきました。
発案のきっかけは何ですか?
eスポーツとリアルなモビリティの親和性の高さに気づきました。
希央さん 今回のコンテストの話をうかがったとき、私たちが取り組んでいるeスポーツの領域と、モビリティの親和性について考えさせられました。親和性が高いのは、やはりレーシングゲームです。バーチャルのレース体験をきっかけに、リアルなレースで活躍されるようになったレーサーもいると知ったのが大きかったと思います。
利用された方からはどのような声が寄せられていますか?
音や匂いがダイレクトに感じられることへの驚き、感動の声をいただいています。
希央さん 前回の実証実験では、障がいのある方、約30名にバーチャルのレーシングゲームを体験してもらい、その後、リアルのサーキットに足を運んでもらいました。レースをバーチャルとリアル、2段階で体験してもらうことで、生で見たレースの感動を最大化するのが狙いです。
参加した方は、事前にバーチャルなコースを走っています。その体験をもとにリアルなレースを観戦すると、音や匂いなどがダイレクトに感じられて、まずそこに感動することが多いようでした。
また、バーチャルのレースで「このコーナーが難しい」「ここでどれだけスピードを上げられるかがポイント」など感じていた部分を、リアルのスピードや音とともに補完できる体験を楽しんでもらえたようです。
実証に向けて苦労していることは何ですか?
リアルとバーチャルを、どれだけスムーズに融合させるかがポイントです。
希央さん バーチャルレースで使用する車種はトヨタのGR86で、これはリアルのスーパー耐久レースのST4クラスで走っている車両でもあります。ゲーム内で使うことで、リアルなレースとの一体感が高まります。タイム比較やコーナーでの挙動の比較なども今回は実現したいと考えています。完全に並走するのは難しいとしても、なるべく近づけるように工夫していきたいと思います。
障がいのある方が運転するのは、路面温度など、サーキットの状況をかなり正確に再現してくれるシュミレーターです。コンピュータがタイヤの食いつきなども計算して、リアルな挙動を再現してくれます。実際に活躍するレーサーも、練習で使うものと同じレベルのシュミレーターを用意しているので、バーチャルレーサーが、リアルレーサーと似たようなタイムを出せたら、ほめてあげてほしいですね。
個人的に注意しているのは暑さ対策です。人間はもちろん機材も熱を持つので、1時間半のレースを2回走れるように管理するのは、結構苦労するポイントだと思います。また、実証実験会場のシミュレーターで走るレーサーと遠隔(家など)から参加するレーサーのハイブリッド開催というのは、他ではなかなか見ない取り組みだと思うので、通信環境を含めて、かなりチャレンジングな試みになるでしょう。
実里さん 前回は1人ずつスーパー耐久レースを見学する形でしたが、今回はチーム戦になります。ドライバーチェンジのタイミングだったり、チームごとの走りの特徴だったりがクローズアップされるはずです。実現するには苦労も多いのですが、期待している、ワクワクしているというのが正直なところです。
本コンテストに参加した理由を教えてください!
障がいがあっても、ハンドルを握ってクルマを操れるよろこびを伝えたいと思います。
実里さん 前回の実証実験では、視覚に障がいがある方でも、音でレースの迫力、醍醐味を感じてもらうというのが大きな目的としてありました。それは一定の評価をいただいたと思いますが、視覚に障がいがある場合、自分で運転するのが困難という問題があります。eモータースポーツなら、いろんな工夫をし、障がいがあってもハンドルを握って運転できることを、新たな魅力として提案できるのではないかと思いました。
ハンドルを握り、バーチャルのレースを体験することで、私たちの取り組みの魅力を広く伝えていけると考えました。
本コンテストでの挑戦、実証内容はどういったものになりますか?
障がいのある方も、ない方も一緒に走る、画期的な試みを行います。
実里さん モビリティリゾートもてぎで開催されるスーパー耐久レースに、eモータースポーツの耐久レースで並走する計画になっています。リアルとバーチャルの融合、新しいモータースポーツの魅力を創造する取り組みにしたいと考えています。
希央さん リアルとバーチャルのレースを組み合わせる考えは以前からあるのですが、今回の特徴は、障がいのある方もない方も一緒に走る、というコンセプトです。障がいがある方だと、なかなかリアルなレースへの参加には高いハードルがありますが、バーチャルによってそのハードル、壁を越えて見せる、というのもコンセプトの1つです。
もてぎでのリアルのスーパー耐久レースは土曜日に予選、日曜に5時間の決勝レースという流れで行われます。予選と決勝の2日間、私たちもバーチャルレースを開催し、土曜日にタイムアタック形式の予選と決勝の1レース目。日曜はリアルの決勝レースと同時刻から、決勝の2レース目を行う、という構成です。
リアルのレースは予選日があり、翌日に決勝という流れが基本なので、それに準じた開催にはこだわっています。ただ、eモータースポーツの場合、5時間となるとPCや機材へも負担がかかってしまうので、土曜日に1回目の決勝レースを開催します。そして、耐久レースであることを意識して、翌日にもう1度レースを行い、2つのレースに分けて取り組めるようにしました。
最後に本コンテストにかける想いをお願いします!
迫力を体感してもらい、モータースポーツのファンを増やしたいです。
希央さん まだ始まって2年目のプロジェクトで、イベント形式で実証実験していることもあって、わりとふわっとした印象を持たれることもあります。サーキットに足を運んでもらい、レースの迫力を直に感じてもらうのがいちばん説得力があります。一人でも多く、モータースポーツのファンを増やしたいという目標を、このプロジェクトを通じて実現したいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
実里さん 現時点の取り組みは、未来につなげるための1つの通過点だと思っています。1シーズン前の私がそうだったように、たくさんの人がモータースポーツ、eモータースポーツの魅力に気づき、ここまで進化してきたはずなので、今回はさらに多くの人に、私たちの取り組みの意義、魅力を知っていただきたいですね。そして、この先の取り組みにつなげていきたいと思います。