AMD(トヨタ自動車株式会社)
遠隔操縦とリアル操縦。
2台のマシンがサーキットでタイムを競うレースを開催。
未来のモビリティ社会を感じる場に。

遠隔操縦とリアル操縦。 2台のマシンがサーキットでタイムを競うレースを開催。 未来のモビリティ社会を感じる場に。

遠隔運転技術、そしてレースについて、須田さんにお話をうかがいました。

今回考案したアイデアの紹介をお願いします!

離れた場所からレースカーを走らせる遠隔運転技術を提案します。

須田さん すべての人の自由な移動を実現するため、最終的に必要になるのは完全自動運転技術です。ただ、現在の自動運転技術は人のサポートが必要な段階にあるため、人の操作意思を遠隔地のモビリティへ送り、思い通りに動かす遠隔運転技術の開発を行っています。

このシステムを構成するのは、まず遠隔コックピット、データを受け取る車体、コックピットと遠隔地の車体をつなぐ通信技術の3つになります。

私たちは自動車メーカーであり、自動車づくりが最も得意な領域です。ドライバーにとっての運転のしやすさはもちろん、いつも安全安心に、快適に移動できる手段を突き詰めて来た歴史そのものが、遠隔運転技術を開発する際の弊社の強みになります。遠隔コックピットをどう操作するかによって、遠隔地の自動車の挙動も変わるため、安全安心、快適な移動に関する技術、ノウハウを背景に開発を行っているところです。

発案のきっかけは何ですか?

完全自動運転など、未来につながる技術開発の一環として考えています。

須田さん 遠隔運転技術は、例えば工場、被災地での移動に有効な手段になるなど、さまざまなメリットがあり、開発には大きな意義があります。また、完全自動運転による無人運転社会を実現するための、重要な要素になる技術でもあります。

なるべく早く社会に実装したいのですが、まだ足りない技術があるのも事実です。足りない技術を開発するには、開発現場を鍛える必要があるでしょう。ものづくりをとことん突き詰め、新しい技術の基点となる場として、弊社はモータースポーツを位置付け、いろんな挑戦を行ってきました。

例えば、スーパー耐久レースで水素エンジンのレースカー開発にチャレンジしていますが、現場で小さな改善を繰り返し、スピード感を持って技術を研ぎ澄ませるには、モータースポーツの現場はうってつけなのです。遠隔運転技術もモータースポーツという極限の場に置いてみようとなり、今回の発想に至りました。

利用された方からはどのような声が寄せられていますか?

未知の体験をしたみなさんから、いろんな声をいただきたいですね。

須田さん 今回の取り組みはすべてが初めての挑戦であり、レース当日まで、誰も体験はできません。サーキットでのレースという限界域、未知の領域での挑戦であり、こうした環境でも遠隔運転で走ることが可能だと、観戦するすべての人に気づいてもらい、そこからいろんな感想を聞かせていただければと思っています。遠隔運転技術があれば、身体に障がいがあっても、遠隔地にいても、誰でも活躍できる社会になることを、予見していただければと思っています。

実証に向けて苦労していることは何ですか?

遅延を極力排除するにはどうすればいいか、突き詰めています。

須田さん 苦労はたくさんありますが、1つあげるならデータ通信の遅延対策です。

遅延の理由はいくつかあり、1つ目は撮影したカメラ映像の画像処理と圧縮になります。2つ目はインターネット経由での転送、3つ目がコックピットで圧縮されたデータの展開です。この圧縮・送信・展開に時間がかかり、ここをどう縮めるかがポイントになります。

私たち自身で工夫できるのは圧縮と展開の部分で、いろんな対策を考えながら、極力遅延が発生しないように取り組んでいるところです。通信技術に関しては私たちの専門分野ではありませんが、いろんなパートナーと協力しながら進めています。

今回は、レース中の事故で下半身に障がいが残る長屋さんにも参加していただくことになっています。何度かお会いし、長屋さんの上半身の動きを考慮しながら、車椅子でも利用できる新しいコックピットの開発も行いました。ここも苦労したポイントですが、障がいのある方だけでなく、健常者が使っても運転しやすいコックピットが完成したと思います。

本コンテストに参加した理由を教えてください!

新しいモビリティ社会へつながるステップになると考えました。

須田さん 先ほど触れたように、遠隔運転技術の開発には人が立ち入れない場所での運用だったり、将来の完全自動運転に向けての重要なステップであったりと、いろんな意義、メリットがあります。こうした取り組みの先に未来があることを、多くの方々に知っていただきたいですし、やるからには楽しんでやりたいという思いから、サーキットでのレースを企画することにしました。

本コンテストでの挑戦、実証内容はどういったものになりますか?

遠隔とリアル、3対1でタイムを競うレースを開催します。

須田さん タイトルは「リアルeモータースポーツ」です。2台のマシンがあり、1台はeモータースポーツドライバーが遠隔運転するもので、マシンはサーキットのコース上にあります。もう1台はドライバー席にドライバーが座って運転するマシンで、タイムを競います。マシンはどちらもサーキットにありながら、操作方法が遠隔とリアルとなり、混在するところに注目していただきたいです。

遠隔運転技術がサーキットでレースカーを走らせるまで進化していることを、驚きを持って伝えるために、極限の性能が求められるレース形式での実施となりました。

遠隔運転するドライバーは3人、実際にドライバー席で運転するドライバーは1人、という構成でのレースを考えています。遠隔ドライバーの1人は、下半身に障がいのある元F3のドライバーで、遠隔運転なら自由に操縦できるところを実証します。他の2人は、eモータースポーツの世界チャンピオン、そして遠隔運転の開発にずっと携わって来た専任ドライバーという構成です。

ドライバー席に座って運転するのは、弊社の新車開発にも関わるドライバーで、非常に高い運転スキルを持つ方です。この3対1で遠隔運転とその場でのドライビングでレースカーを走らせ、どちらが速いのかを競うレースになります。

最後に本コンテストにかける想いをお願いします!

世界初のイベントの行方を、歴史の証人として見届けほしいと思います。

須田さん 今回の取り組みは、遠隔運転で走るマシンと、ドライバー席でドライバーが運転するマシンが、リアルのサーキットでタイムを競う世界初のイベントになります。その結果がどうなるのかは、私たちにもわかりません。興奮と迫力を現地で味わっていただきたいですし、一緒に歴史の証人になっていただければと思います。

遠隔操縦とリアル操縦。 2台のマシンがサーキットでタイムを競うレースを開催。 未来のモビリティ社会を感じる場に。
【AMD(トヨタ自動車株式会社)】実証チーム紹介 | Mobility for ALL 2023
プロジェクト代表者
代表者写真
プロジェクト代表者
須田 理央
2004年トヨタ自動車入社。
入社以来、車両運動制御VDIMの先行開発から量産化まで一貫した開発を手掛け、主にABS/TRC/VSCといったブレーキ制御系、前後輪独立ステア制御、ステアバイワイヤ開発に従事。
社内の自動運転開発の活発化に伴い、遠隔運転の有用性と必要性を確信。社内のアセット(ステアバイワイヤ技術、クルマ屋ならではの上手なクルマの動かし方、安心安全なシステム構築の知見)を生かした開発を続け、現在に至る。
「クルマと、操る喜びをリアルの世界へ。リアルeモータースポーツ」
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