車椅子の半自動運転技術開発について、川崎さん、江口さんにうかがいました。
今回考案したアイデアの紹介をお願いします!
複数のカメラ、センサーを組み合わせた半自動運転システムです。
川崎さん 半自動運転車椅子「Feeling」の開発を行っています。特徴は、乗る人の意図を推定しながら、周囲の環境を認識し、安全かつ主体感のある走行を実現するところです。日常的に車椅子を利用している方、さらに視覚に障がいがあるなど、まわりの状況確認が困難な方に使っていただくことを想定しています。
構造について補足すると、ベースになる電動車椅子にたくさんのセンサーが搭載されています。センサーがまわりの障害物を認識し、それを避けるように自動で制御しながら移動する仕組みです。また、座面にも乗る人の動きを検知するセンサーがあり、体の傾きなどから、どの方向に向かいたいのかを読み取ることが可能です。
腹巻のように装着して使う、ライダーベルトと呼ぶ触覚デバイスもあり、システムがどう判断しているかを乗る人に伝える役目を果たします。こうした複数のコンポーネントを組み合わせることで、自律的に移動、乗りこなす感覚を味わっていただけます。
カメラ、センサーは複数種類搭載され、色情報に加えて深さ、奥行きの方向まで感知できるRGB-Dカメラが前のほうに2台搭載されています。後方には3次元RiDAR、下には2次元RiDARを搭載していて、360度死角のない観測が可能です。道路を走るクルマとは違って、Feelingの自動運転は生活空間をリアルタイムで認識しながら制御するのが特徴です。
発案のきっかけは何ですか?
意欲を引き出すために、技術をどう活用すべきか考えました。
川崎さん 研究活動の一環として、病院に出入りする機会が多くありました。医療や介護の現場を目の当たりにして、人の意欲を引き出すことの重要さを痛感するようになり、私たちの技術をロボットのようなシステムに落とし込み、主体感を持って使ってもらうにはどうすればいいのか考えるようになりました。そこから、自らの意思で自律的に移動の手助けをするシステムを着想しました。
実証に向けて苦労していることは何ですか?
人の意思と、システムの制御のバランスをどう取るかです。
川崎さん 利用する方の立場から見たときに、新しい機械の世話になるのは不安もあるはずです。特に車椅子のように動くものは不安も大きくなるでしょう。実際に乗る方の不安を、どうすればやわらげられるかを考えて、腰に巻いて使う触覚デバイスを用意することにしました。この触覚デバイスと他のセンサーを組み合わせて、半自動運転を実現するのが苦労するポイントです。
それぞれのコンポーネントを正しく機能させること自体、難易度は高いのですが、乗る人の意図をくみ取って、制御し、乗る人にフィードバックする流れの構築は未知数の部分も多く、手探りで開発を進めていきました。大変ではありますが、体験していただく方がワクワクしていただけるのを楽しみにしています。
江口さん 私は普段アメリカにいますが、2つの国の社会で起こっている問題はかなり異なると感じています。高齢化が急速に進む一方、道は狭くて移動が難しい場面も多いなど、日本ならではの課題を解決するにはどうすればいいのか、外の視点から考えています。アメリカで学んだ技術をどう反映させるかが自分の重要なミッションです。
本コンテストでの挑戦、実証内容はどういったものになりますか?
移動にゲーム性を持たせ、楽しく体験できる場を用意できればと思います。
川崎さん 周囲の環境の危険度や複雑さと人間の意思を合わせ、その人にとって最適な塩梅で、安全かつ快適な制御を実現するのが難しいところで、そのアップデートに取り組んできました。今回の実証実験は、今までの取り組みを確認する場として位置づけていて、利用する人に、自分で乗りこなしている感覚を持ってもらえるかどうかを検証したいと考えています。具体的な方法としては、サーキット内にあるアミューズメント施設で自由に移動していだたくつもりです。ただ移動するするだけでなく、宝探しのようなゲーム性を持たせることで、探索しながら、自分の意思で移動する楽しさを体験していただこうと思います。
最後に本コンテストにかける想いをお願いします!
行きたい場所に、自分の意思で出かける楽しさを追究する。
川崎さん 障がいのある方や高齢者が、外出すること自体を諦めずに暮らせる社会の実現を目指しています。Feelingがあることで、もうちょっと遠出してみよう、旅行に行ってみよう、音楽フェスに行ってみようなど、行きたい場所に自分の意思で出かけられる環境を提供したいですね。連れて行ってもらうのではなく、自分が操作して移動してこそ、感じられる楽しさがあるはずです。
江口さん ただの移動手段ではなく、乗ること自体が楽しいと感じていただきたいです。私たちがよく晴れた日に外を歩くと気持ちよさを感じるように、たとえ障がいがあっても、Feelingを自分で操作する感覚を楽しみながら、とこまでもスイスイ行けるようになってほしいですね。